カウンセリングの『枠』-時間・場所・料金-
カウンセリングを受けた方や、受けられている方はご存知だと思いますが、カウンセリングを行っていく上で、いくつかの決まりごとを設定しています。それは、カウンセリングの場を作るともいえる『時間』、『場所』、『料金』です。
なぜ、そのような設定があるのか、カウンセラーや施設側の理由もありますが、今回はカウンセリングを受けられる方の側の理由を一部取り上げてみたいと思います。
日常生活の例を挙げながら1つずつ考えてみます。
これまで習い事をされたことのある方は、その場面を思い浮かべてみてください。
まずは『時間』についてです。
習い事を始めたばかりの頃は、「○曜日は○○」と意識して思い出していたものが、通い続けるうちに、自然と「今日は○○か」と生活の一部になっていたという経験があるのではないでしょうか。また、決められた時間の中で取り組むからこそ、その時間は自分の時間と感じられたり、習うことに没頭できる時間になっていたのではないかと思います。
そもそもカウンセリングは、毎週1回や2週に1回、月に1回など同じ頻度で、同じ曜日の同じ時間に行います。
そのような『時間』が定められているという制限があることで、自分のことに目を向ける習慣ができたり、○曜日の○時は誰にも邪魔されない「自分だけの時間」と感じたり、真剣に悩みごとや困りごとに向き合おうと思える時間になるのではないかと思います。
これが、カウンセリングを行う上で、『時間』のお約束をさせていただく理由のいくつかです。
次に『場所』についてです。
習い事の例で言えば、時々で場所は変わらず、同じ場所で行うことがほとんどだったと思います。その中で、楽しいと感じたり、上手くいかずにつらいと思ったりなど、さまざまな気持ちが湧いても、「ここだからできる」というように、目的を見失わずに取り組んでいけたこともあったのではないでしょうか。
カウンセリングも原則として同じ部屋で行います。自分のことをお話ししていく中で、大変だなと感じたり、逃げ出したくなるときがあったとき、カウンセリングを行う『部屋』が自分と向き合うことを後押ししてくれたり、支えになることもあるように思います。また、ここで頑張れたという実感を強めてくれたり、他の人に邪魔されない中で話ができるという安心感が持てるということも、『場所』が定められている理由として挙げられます。
最後は『料金』についてです。
習い事をする際には、月に定額の料金を払うことが定められていると思います。現実的な話ですが、料金を支払うことで、「せっかく払っているんだから・・」と積極的になったり、能動的に活動に向かったときがあったのではないでしょうか。また、お休みしたり辞めたりするときには「申し訳ないな」という気持ちが湧いても、「お金を払っている/払わないのだから」とどこかで思えた経験があるのではないでしょうか。これは、『料金』が、個人的に親しい関係ではない、あくまで先生と生徒など、目的を叶えていくための関係性を守るものとして機能するためと言えます。
カウンセリングでも料金が決まっていることで、真剣に自分のことに向き合おうという気持ちを強めてくれたり、自分のことを自分のこととして考えていくきっかけにもなるように感じられます。また、カウンセリングを調べてみると、その料金の高さを感じるのではないかと思います。もしかすると、それによって躊躇われるという方もいらっしゃるかもしれません。ただ、見方を変えれば、気軽にできないものだからこそ、それでも受けようと思えたとき、『時間』と『場所』の枠組みも相まって、カウンセリングが「自分だけの時間」としてより強く感じられるのではないかと思います。これがカウンセリングを行う上で『料金』が定められている理由として挙げられます。
以上、今回はカウンセリングを支えている枠組みについてお話をさせていただきました。
私自身、日々生活している中で、急速に変化していく現代は、自分がいつどうなるのかわからないという不安を起こしやすくしているのではないかと感じています。そのような時代の流れを考えると、時間をたっぷりと使うカウンセリングは、時代を逆行するものなのかもしれません。ただ、自分の心をじっと見つめて、その声に耳をすませていく体験は、時代の流れに埋もれていかない自分との出会いの時間になるようにも思います。
カウンセリングにご興味のある方は、メールフォームよりお問い合わせください。なお、ご予約ではなく、カウンセリングや心理検査に関するご質問も受けつけておりますので、お気軽にお問い合わせください。
文責:伊藤(カウンセラー)
2020年05月19日 22:10