WAIS-IVについて
WAIS-IVについて (文責 カウンセラー 桑畑)近頃、テレビやインターネットなどのメディアで「発達障害」という言葉を聞くことが増えてきていると思います。この文章をお読みになっている方の中にも、自分はもしかしたら発達障害なのではないか…と思われている方もいるかもしれません。そのような疑問にお答えするヒントになり得るのが、これからご紹介する「WAIS-IV」という知能検査です。
しかしぜひ気を付けていただきたいのは、WAIS-IVは発達障害を診断するための検査ではなく、あくまで「その方の能力の特徴を分析・整理し、これからの日常生活や仕事・学業に役立つヒントを見つける」ための検査であるということです。たしかに、医師が発達障害を診断するにあたってWAIS-IVの結果が参考になるという側面は存在します。しかしこれから検査を受けられる方、受けようかなと検討している方、そして以前検査を受けられた方には、ご自分に発達障害があるのかどうかだけでなく、検査の結果から見えてくる生活のヒントに目を向けていただければと思います。その上で、ぜひ以下に続くWAIS-IVについての紹介を読んでみてください。
①WAIS-IVではどんなことをするの?
毎日テレビのいろいろなチャンネルでやっているクイズ番組を思い浮かべてみてください。知識を問う問題、ひらめきが大事な問題、はたまた記憶力が必要になる問題…と、さまざまな場面が思い浮かぶと思います。WAIS-IVでは、このようにいろいろなジャンルや形式の問題に取り組んでいただきます。
検査後は、担当した心理士が結果の分析とまとめを行い、後日その結果をご本人にお返しします。WAIS-IVはさまざまなことがわかる検査なので、その分結果の分析とまとめには時間がかかります。当院では、心理士が報告書を作成した後、直接ご本人とお会いして検査結果についてご説明した上で報告書をお渡ししています。「なるほど」、「意外!」、あるいは「そんなことないんだけどな…」など、さまざまな感想が思い浮かぶと思います。その感想や疑問について、ぜひ心理士と話し合ってみましょう。
②WAIS-IVではなにがわかるの?
上記の通り、WAIS-IVではいろいろなジャンルや形式の問題に取り組んでいただきます。それらの問題はそれぞれ、人が社会の中で生活していったり、仕事や勉強をしていく上で必要になってくるさまざまな能力を測っています。どの問題は得意で、どの問題は苦手だったのかを分析していくことで、その方の能力の特徴をみることができます。その特徴をもとに、苦手を得意で補うためのヒントを探していきます。
ここでさらにわかりやすくするため、架空の事例を見てみましょう。
「上司に新しい仕事を指示されても、なにがなんだかわからなくなって失敗してしまう」と悩んでいるAさんという方がいます。Aさんは、自分の能力に問題があるのではないかと思い、WAIS-IVを受けてみました。すると、Aさんの全体的な能力はけして低いとはいえなかったのです。その結果にAさんは驚きました。しかし詳しく見ていくと、耳で聞いたことを覚えるのが、他のことと比べて苦手という結果が出ていました。この結果を聞いたAさんは「そういえば、いつも上司は仕事の指示ややり方の説明は口頭で1回言うだけだった。だから自分は上手く覚えられず、理解もできなかったんだ」と気づきました。さらに詳しく見ていくと、目で見たことを理解するのはとても得意だという結果も出ていました。そこでAさんは心理士と話し合い、上司から指示されたことをいつでも確認できるようにすぐメモをとる習慣をつけたり、先輩社員に手本を実際に見せてもらえるよう頼んだりと、さまざまな工夫を取り入れることにしました。すると、以前よりスムーズに仕事をこなせるようになったのです。
このAさんのように、WAIS-IVでは生活のヒントを見つけていくことができるのです。
ぜひ、ご自分がより快適に生活していくために、この検査を役立ててみてください。もし検査を受けたいと思われた方は、お気軽にご相談いただければと思います。もし検査を受けることが決まりましたら、せっかくの機会ですので、検査を通して知りたいことをご自分でも詳しく考えてみてください。担当する心理士は、検査を受けられる方の疑問に答え、その方のお役に立つヒントを提供できるよう努めています。
2020年04月18日 18:45